エメラルドの滝の守り神:イロヌシの巻
むかしむかし、世界がまだ魔法であふれていたころのお話です。山の奥深く、だれも知らない秘密の谷に、大きな滝が大きな音を立てて流れていました。
ドォォォーーン! バッシャーン!
そこは「エメラルドの滝」と呼ばれていました。秋になると、まわりの森は赤やオレンジ、金色にピカピカと輝きます。まるで世界中が火や太陽の光でできているみたいにきれいでした。
深い淵の、がんこ者の龍
滝つぼの底には、エメラルド色をした大きな水の龍、ミズチが住んでいました。ミズチは自分の住みかが大好きです。毎日、透き通った水の中をスイスイ泳ぎながら、水が汚れていないか、冷たく保たれているか見守っていました。
でも、ミズチはちょっとした「がんこ者」でした。「しずくが、ひとつ、ふたつ……」と、毎日しずくを数えるのが日課です。何でもきっちりしていないと気が済みません。そんなミズチには、たったひとつ嫌いなものがありました。それは、池にふわふわ流れてくる「秋の落ち葉」です。
「まったく、散らかってしょうがない! 邪魔だ、邪魔だ!」 ミズチはいつも、ぶつぶつ文句を言っていました。
風と踊るクマさん
滝から少し離れたところに、ふわふわの毛並みのクマさんが住んでいました。胸に白い三日月のしるしがあるツキノワグマです。龍のミズチとは反対に、クマさんは秋の落ち葉が大好きでした。クマさんは山の風とおしゃべりができる、いつもニコニコしている、とっても明るいクマさんです。
クマさんがその場でグルグル回って大きな手を振ると、「落ち葉のくるくる風」を作ることができました。
ヒュルルルゥー! ヒュルー! 落ち葉が空高く舞い上がります。
クマさんは真っ赤に染まったくるくる風の中にピョン!と飛び乗り、木々の間をすり抜けます。風に耳をくすぐられて、クマさんは楽しそうに笑いました。
イロヌシのあらわれ
ある静かな午後のこと、森が急に灰色に変わりはじめました。いたずら好きの妖怪、「イロヌシ(色盗)」たちがやってきたのです。
この不思議な生き物たちは、古くて壊れた傘のような姿をしていて、長くて曲がった鼻を持っていました。彼らは木の実も魚も食べません。彼らが食べるのは「色」なのです。
「いい色だ……ズルズル……吸い込んじゃえ……」
イロヌシたちは「ひそひそ……」と、楽しそうにささやきあいました。
ズルズルッ! 赤い葉が灰色になりました。
シュルルルッ! 金色の木が、色をなくしてしまいました。
イロヌシが触るものはすべて、カサカサの、元気のない灰色になってしまいます。イロヌシたちは、まっすぐ滝に向かっていました。もし滝にたどり着いたら、ミズチのエメラルド色のウロコも、魔法の滝も、ぜんぶどんよりした灰色に変えて吸い取ってしまいます。
スーパー・サイクロン
龍のミズチは「ガオー!」と吠えて、大きな水の柱を吹き出し、自分のすまいを守ろうとしました。でも、イロヌシたちはひらりと空高く浮かんで、攻撃が届きません。
灰色の影が広がっていくのを見て、クマさんが叫びました。「ミズチ、待って! 二人で力を合わせよう!」 クマさんは落ち葉のくるくる風を操って、滝のすぐそばまでやってきました。
ミズチは一度深く潜ると、緑色のロケットのように勢いよく飛び出し、クマさんのくるくる風に長い体を巻き付けました。
するとどうでしょう! 二人は、「水と落ち葉のスーパー・サイクロン」になったのです! それはまるで、巨大な魔法の洗濯機のようでした。
クマさんの回る風と、ミズチの激しい水しぶきが「ガッチャン」!とひとつになって、まぶしい光のあらしが吹き荒れました!
まわれ! はじけろ! ビュビューン!
イロヌシたちは、嵐の真ん中に閉じ込められてしまいました。
「うわぁ! 水がすごい! 色がまぶしいよぉ!」 イロヌシたちはキーキー悲鳴を上げ、傘の頭をガタガタ震わせました。
すると……ポンッ! ポンッ! ポンッ! イロヌシたちはシャボン玉のように消えてしまい、盗まれた色は一気に森へと戻っていきました。
ひみつの友情
森は救われました。赤色は前よりもずっと赤く、金色はもっとキラキラ輝きました。
ミズチは大きな音を立てて、ドボーン!と滝のふちに戻りました。ふと見ると、鼻の先にオレンジ色の葉がひとつ浮いています。今度は文句を言う代わりに、ミズチは優しい霧を吹きかけて、葉をピカピカにしてあげました。
「ふむ……少しぐらい色があるのも、悪くないな」 龍は小さくつぶやきました。クマさんは手を振って、また落ち葉の中で楽しそうに踊りに戻りました。
今でも秋にこの滝を訪れると、水が龍のウロコのようにキラキラ光り、落ち葉がクルクル回っているのが見えるかもしれません。それは、ミズチとクマさんが、今でもこの世界の「色」を守っているしるしなのです。
『エメラルドの滝の守り神:イロヌシの巻』および付随するイラストは、作者の指示のもと人工知能を活用して制作したオリジナル作品です。
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